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部屋中どこを見ても、彼女の残していった破片すら見つけることが出来ずに、昨日だけではなく、これまでこの部屋で彼女と過ごした時間は全て夢だったのではないかと思えるほど、儚い記憶。
目を閉じると浮かんでくる彼女の姿が、返って切なさを誘う。
ベッドから立ち上がり、リビングに向かうと、テーブルの上に置きっぱなしの伏せられたスマホ。
ゆっくりとそれに手を伸ばし画面を見ると、彼女からのメッセージ。
『ごめん…
もう、二人で会うのはやめよう。
今まで、ありがとう』
カタン…
右腕をだらりと下ろすと、かろうじて落とさずに済んで、掌の中に留まったスマホが床に当たり音を立てる。
あぁー、やっぱり…
脱力と共に、驚きよりも先に来た納得。
いつかはこうなる事を、心の片隅で予感していたんだと、妙に冷静に捉えている自分に驚く。
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