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ふらりと立ち上がり冷蔵庫へ向かう。 扉を開けると、先ず目に入ったのは、皿に入ったきんぴらごぼう。 今朝、彼女と一緒に食べようと用意していたもので… それを手に取ると同時に冷蔵庫の扉から手を離すと、パタンと閉まる。 両手で皿を持って、じっと上から見つめると、ラップ越しに不揃いの茶色く染まったごぼうと人参が見える。 ポタリとラップの上に水滴が落ちる。 またポタリ、またポタリと…。 不恰好に、手の甲で頬を拭いながらも、きんぴらをじっと見つめる。 堰を切ったように、次から次へと落ちてくる涙の粒はラップの上に水溜りを作った。     
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