おかあさん

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B「おかあさんもあそぼ?」  そういうと、雪で濡れた袖を気持ち悪そうにいじりだす。  見かねて私が袖をまくってやる。すると、また思い出したように、 B「おかあさん、あそぼ! あそぼ!」 とジャンパーの裾を、赤く小さなおててで引っ張ってくる。きゅ~ん。  あざとく誘ってくるが、カメラから頭に手を伸ばしたくなるのをこらえ、しばらくそっけなくしていると、 B「きゃあ!」  甲高い声ではしゃいだかと思えば、目の前のふかふかへとまっしぐらに突っ込んだ。ばふっ……。  慌てて一眼レフを構えると、なにやら不穏な感じ。カメラを首からぶら下げて、我が子のもとへと駆け寄る。  鼻でも打ったのか、鼻を押さえながら少し涙目になる愛しの我が子。どうしたの、と声をかけると、にんまり笑顔に。よかった、大丈夫だったんだね。 B「おかあさん、あそぼ!」  いいよ、おかあさんといっしょにあそぼうね。  あのときからかな。あの一眼レフを使わなくなったのは。代わりに使うようになったこのカメラは、今でもしっかりと我が子を映している。  ──雪解けまじかの、少し日が長くなったころ、私はカメラをやめた。撮ることはもうできないけれど、メモリーは残るといいな。  ああ、愛しの子、あなたはあなた自身のカメラを使いなさいね。私の見ることのない風景を、ひとを、ものを、その心に映してちょうだい。今までありがとう、そしてさようなら、愛しの我が子。
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