そして空を見上げた。君と未来への道を見つけるために。

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じわりじわりと、ゆっくり、でも確実に"その時"を知らせてくる、痛み。 ぽつりぽつりと、小さく、でも的確に体と心に染み込んでくる、不安。 その合間合間に、きらきらと見え隠れしながら降りてくる、期待。 陽がとっぷりと暮れた静かな街中から、車が一台、急いで発進する。急いで……でも安全運転で。 後部座席で大きなお腹をさすりながら、次第に短くなる痛みの間隔に歯を食いしばって耐える。 検診で何度も通った道を辿っていく。はじめの頃は様々な検査や説明に戸惑った。お腹が大きくなってくると、車を運転するのは大変。でも、元気な姿を確認したいから、しっかり通った。 2D、3D、4D……技術の進歩でお腹の子の顔は目の前にはっきり写る。車に戻ってからこの小さな足が私のお腹を蹴るのね、と後からもらった写真を見て笑った。 その時が近付いてくると、準備が大変。入院準備はもちろん、退院してからの事も考えて揃えておかなくちゃ。 頼れる人が少ない私は、何でも自分でやらなきゃと意気込む。 だから……早く会いたい気持ちと、準備が整うまではまだお腹にいてほしいと矛盾を抱えてしまう。
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