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信号で停まる。運転席で夫はハラハラしてる。もっと落ち着いてよ、あなたがそれでどうするの……と、ちょっとだけ思考をずらすと痛みが楽になった。
真っ暗な道の先を見る。
明るい場所を求めて、進む。
君ははじめて通る道。
本能で知ってる、進むべき道。
不安なのは私だけ。
怖いのは、私だけ。
痛いのも、私だけ。
だけど君も一緒に頑張ってるんだって、聞いたよ。ほんとう?
居心地のいい場所には、ずっといたい。
このままの幸せが、続けばいい。
でも、人間ってそんな停滞する生き物じゃないから。
道があれば、進むから。
私にとっては、未知の道。
君ははじめて通るのに、知ってる道。
痛みの間隔をみて車から降り、深呼吸をひとつ。真っ暗な道を辿った先に君がいるなら、私も行かなくちゃ。
光が溢れる入り口へ、ゆっくり自分の足で向かっていく。中で待っていてくれた看護士さんに案内されて、まずは心音と胎動でご対面。
君の少し早く、力強い鼓動。
希望と期待しか持っていないんだ。
私の少し早く、緊張してる鼓動。
不安や焦りを、取り除きたくて。
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