第一章  霊感

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そして、話も中盤辺りに差し掛かると、耳をつく大声で自らを貶めて、たくさんの 後悔を口にして涙を流した。 こんな時、た易く感情移入してしまう月子は、目の前のサムライの先祖霊と一緒に オイオイと泣きじゃくってしまうのだった。 そんな、無防備な月子の涙は、サムライの先祖霊の心をじんわりと癒していった。 「か、かたじけない。お陰で心の乱れが無くなりました」 「そうですか。良かったです」 月子の、霊に寄り添うカウンセリングは、彼らたちの間でとても評判となり、増々 ここを訪れる霊は増えて行った。  今日も、霊達の悩み事相談で1日が終わってしまった。 そんな月子は家事も思うように出来ない上に、疲労も溜まっていた。 月子はタオルで顔を拭うと、蚊取り線香の焚いてある縁側に座ってお茶をすすった。 目の前に広がる庭で、赤トンボが飛んでいる。 月子は溜息をついて、そして空を見上げた。 すると。 「オ~イ 無理すんなよ!」 そこには心配顔で手を振る、月子の守護霊がいた。
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