第一章  霊感

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 月子に相談にくる霊はいろいろ居たが、一番多いのが先祖霊だった。 先祖霊たちは大抵、虚無感について悩んでいた。 血を分けた子孫を助けたかったのに、自分の力不足でそれが出来なかった空しさに、 彼らは相当苦しんでいた。  月子に、また霊感が走った。 「あの、今いいですか?」 そういって、番号札を持ったサムライの先祖霊がやって来た。 霊達は、言ったら悪いけれど、こちらが手が離せない忙しい時に限ってやって来た。 月子はその最悪のタイミングに、霊ならもっと解かって欲しいと思いながらも、柔 らかい笑顔で応えるのだった。 しかし霊達のそんな自然体のところにも、月子が親しみを感じていたのは間違いな かった。 そのサムライの先祖霊は、月子が、いいですよと言わないうちにすでに、持参の座 布団に座り白い手ぬぐいを手にしていた。 よほど辛いことがあったのだろう。 「どうしました?」 そう言いながら月子はそのサムライの先祖霊に、お茶と美味しいと評判の和菓子を 勧めた。 「あの・・・」 最初は遠慮がちに、ポツリポツリと話しているサムライの先祖霊であった。 「そうですね、大変でしたね」 しかし、月子の温かい言葉にほだされて、このサムライの先祖霊も胸の奥にしまっ てあった痛みを、本来の口調で語りはじめた。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加