コウノトリの巣の上で

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 「いや、そんなことないよ。僕らもなかなか子供に恵まれなくて、いよいよ不妊治療をやろうかと思って、まずはネットや口コミで色々調べたんだ。そしたら、この人に頼めば絶対赤ちゃんを授けてくれる、100%成功間違い無しっていう、すごい評判の先生を見つけたんだよ。それが河野佳子って名前だったから、あれ、もしかしたらと思ったら、やっぱり佳子ちゃんだったってわけさ」  「すごい先生なんて、ちょっと、それこそ大げさだわ。おだてても何も出ないわよ」  彼等の前では一応謙遜してみせた。私だってそれなりに常識は有る。  「それはともかく、あなた達の為には勿論最善を尽くすわよ。私の全力を投入して、絶対に成功させるわ。必ず貴方達に赤ちゃんを抱かせてみせる。私が貴方達のコウノトリになるわ」  彼等の目を交互に見つめながら、私はしっかりとした口調で確約する。  「ありがとう!」  「ありがとう、佳子ちゃん!やっぱりここに来てよかった!」  「みんなで頑張ろうね!」  今回は特に、絶対に失敗は許されない。私はあらためて心に誓った。  ♪ランラン、ランラン、ランランラララララン♪  ♪ランラン、ランラン、ランランラララララン♪   朝起きる時も、そして一日が終わって疲れきって帰ってきた時とかも、この曲を聴いてると、気分が楽になってくる。ヨナーソンのカッコーワルツ。シンプルな小品だけど、とっても親しみやすい曲。私のリラクゼーションミュージックの一つだ。  今日は妊娠判定の日だった。勿論全て順調だ。採卵・採精、顕微授精、移植、全てのプロセスが問題無く進んできている。     
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