コウノトリの巣の上で

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 「大丈夫。卓哉君の精子を受精した卵子は、あなたの子宮で順調に育っているわ。これであなたも妊婦さんよ」  「本当?よかったー!」  真理は涙ぐみながら感激する。  「とりあえずは妊娠おめでとう、真理ちゃん。でもこれからが本番よ。あくまでもゴールは出産なんだから、今後は妊婦さんとして頑張ってね。私も勿論最大限のサポートを続けるわ。女同士、一緒に頑張って元気な赤ちゃんを送り出そうね」  「うん、頑張る。佳子ちゃん、本当にありがとう!」  この命だけは、絶対に、この世に送り出さなければいけない。私の手を握って涙ぐむ真理の顔を見ながら、あらためて思った。大丈夫、絶対大丈夫。真理に言いながら、私は自分にも言い聞かせていた。  それにしても、自然の営みって本当に凄い。ありとあらゆる生物が毎日のように行っている生命の再生産は、プログラムされた行為をただ本能に基づいて繰り返しているように見えるけど、時に物凄く巧妙で、スマートな行動を見せることがある。本当に、自然界には大いなる知恵が実在してるんじゃないかと思わされることは実に多いのだ。どんなに人間の知識や技術が進歩しても、自然は常に私達の偉大な先達であり、教師なんだと思う。
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