コウノトリの巣の上で

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 私は嘘は言ってない。そのとおりだったのよ。  ただ、卵子は真理のじゃなかったけどねえ……  そう、あれは私の卵。  卓哉の精子を受精させた私の卵子を、真理の子宮に移植したのよ。  真理達が不妊治療に現れた時、驚くと同時に、何か啓示のようなものを感じたのよ。  卓哉の精子が手に入る。そして授精から、移植、妊娠まで全てが私の手に委ねられる。 これこそ神様がくれたチャンスだと思ったわ。そう、あれは神の意思だったのよ。  顕微授精を行う時は本当に興奮した。立ち上る卓哉の精液の匂いを鼻腔いっぱいに吸い込むと、それだけで笑みが零れて来たわ。もう、興奮で頭がくらくらしそうだった。勿論、それでも私は絶対に失敗なんかしないけどね。授精作業は手際よく、完璧に終了した。残った精液は、後程この私が頂きました。くふふふふふ。  あんな頭カラッポで、容姿だって平凡なのに、ガキっぽさで保護本能を刺激して他人に依存するしか能が無いおバカ女の卵子なんて、卓哉の遺伝子を汚すだけよ。そんなの、人類の為にも絶対に許せない。     
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