第二話

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 特に過疎化が深刻なこの町は、来訪者に対して非常にウェルカムな空気がある。相手が若者となれば尚更だ。  芳の場合、見た目はともかく人当たりは良さそうなので、尚の事誰とでも気さくに話している姿が容易に想像出来た。  しかも場所が商店街となると、最早この町の中心核の人々に、芳の存在が認識されたも同然だ。  額を押さえる英司に構わず、芳はペラペラと勝手に話し続ける。 「商店街にある三井青果店……だっけ? 八百屋さん。なんか箱山積みになってて大変そうだったから、手伝いながら世間話してたら、お礼にって飯食わせてくれてさ。おまけに俺が文無しだって知って、近くの店の人たちに声掛けてくれて、向かいの豆腐屋のおばちゃんから、『息子が着なくなった服だけど』って、コレ貰っちゃった」  そこでやっと、芳の服装が朝と変わっていることに気がついた。  細身な芳にはちょっと余り気味のデニムに、袖と丈がやはり長めのパーカー。更に腕には薄手のダウンジャケットを引っ掛けている。 「みんな超いい人過ぎじゃない? 田舎だけどいいトコだね、ここ」 「それはどうも。ところで、その話から貴方が僕の車の前に居る理由には、どう繋がるのかな」     
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