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しかし英司が生まれて間もなく、隣町に国道が通ると、次第に人々はそちらへ流れ始めた。
それなりに大きな工場や商店は次々に隣町へと移っていき、更に二年前、隣町を通る国道が二本に増えてからは、人口の流出は益々目立つようになった。かつては五千人を超えていたらしい数田美町の人口も、今では半数以下の二千人弱まで減少している。
日中は人通りが絶えなかった商店街は、現在営業している店舗が三分の一ほどしかない。町内を走るバスの本数も年々減り続け、今では平日の通勤通学時間帯には二本になるものの、それ以外の時間帯や土日祝日は一時間に一本のみ。お陰で本来最も人が行き交うはずの駅前ですら、最近はすっかり閑散としている。
そんな小さな町にある、唯一の医療機関。それが、曾祖父の代から続くこの月村病院だ。
細かな補修工事は何度か施されているものの、建て替えもされていない病棟は、決して綺麗だとは言えない。
電子カルテが一般化している中、ここではまだそのシステム導入も追いつかず、カルテも紙媒体。
今は父と、去年結婚した姉に加え、近隣の町から医師や看護師を雇ってどうにか回しているが、それでも人手不足は否めない。
そして何より問題なのは、最新とは程遠い医療設備だ。
医者は万能でもなければ、神でもない。
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