第二話

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 あっさりと自分の存在を消して欲しいなどと言う芳は、英司とは対照的に全てを失くしたがっているようにも見える。本来なら強く求め合うはずのパートナーの存在も、元居た場所も、芳自身さえも───。  まさか呼び止められるとは思っていなかったのか。駐車場の出口で足を止めた芳が、意外そうな顔で肩越しに振り向いた。 「今日も、神社で寝泊まりするつもり?」 「あー……うん。だってあそこ、無人なんでしょ? あ、でも英ちゃん散歩に来るのか。迷惑?」 「そういうことじゃなくて……まだ朝晩は冷えるし、野宿には慣れてるようなこと言ってたけど、その身体つきじゃいつか風邪をひくのが関の山だ」  英司の言葉に、芳はフッと目を細めて笑った。 「英ちゃん、やっぱ機械じゃないよ」  ヒラヒラと英司に手を振って、今度こそ芳は駐車場を出て行った。向けられた笑顔が、どこか寂しげに見えたのは気のせいだろうか。 「あっ、若先生! 外にいらっしゃったんですね。院長がお呼びです」  結局買ったコーヒーを開けることすら出来ないまま院内に戻ると、丁度廊下を曲がってきた看護師が、英司の姿に気付いて足早に近づいてきた。 「ああ……すみません。すぐに行きます」  きっと院内を探し回ってくれていたのだろう。薄ら額に汗を滲ませた看護師に、未開封の缶コーヒーを「良かったらどうぞ」と手渡して、英司はすぐ傍の階段から二階へ上がった。     
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