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相変わらず、商店街の人たちからは売れ残った食材などを恵んでもらっていること。
役場の隣に小さい図書館があることを知って、二日に一度は通っていること。
銭湯のお湯が熱すぎるということ───等々。
どれも、英司は「へぇ」とか「そう」という相槌を返して終わってしまうような会話ばかりだ。
彼に関して新しく得た情報というと、この町へ来る前は渋谷に居たということと、実は料理が得意らしいということくらいだろうか。
料理については素直に意外だと思ったが、芳が「渋谷に住んでいた」とは言わず、「渋谷に居た」と言ったとき、ふと小屋で聞いた言葉が頭を過ぎった。
『俺にもそんな場所、あれば良かった』
あの言葉には、どんな意味があったのだろう。
芳には、「住んでいた」と言える場所が無い、ということなのだろうか。
だが英司は敢えてそれを問い詰めることはしなかったし、芳もそれ以上話そうとはしなかった。お互い何となく、これ以上踏み込んではいけない一線を認識していて、その手前で踏み止まっている。このままの関係が、この先ずっと続くことはないと認識していながら───。
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