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居て欲しいのに消えていて欲しい。
あまりにも矛盾が過ぎる願いと共に、英司はノックもなしに鍵のない扉を引き開けた。
小屋の中に、芳の姿はない。
木の匂いは相変わらずするものの、初めて足を踏み入れたときと違って、埃っぽさがほとんどなくなった屋内。
作業台に置かれたカセットコンロと、その上に乗せられたケトル。
壁際のソファには、雑に畳まれたブランケット。
それらを、芳が天井から吊り下げたランタンが照らし出している。
なのに、その空間に芳の姿だけが無い。
自分で願ったくせに、いざとなるとその現実が受け止められず、可笑しくもないのに乾いた笑いが漏れた。
「ハハ……まさか本当に、化かされてたのかな……」
ほんのついさっきまでこの場に居たかのようなのに。
頭が上手く働かず、英司がフラリと扉に寄り掛かったとき。
ドサ、と小屋の裏手の方で何かが倒れるような物音がした。
反射的に顔を上げ、外へ飛び出して小屋の裏側へ回る。
暗がりの中、伸び放題の雑草の隙間から、細い脚が二本伸びている。
相手の荒い息遣いが聞こえる距離まで近付いて、やっとそれが倒れた芳の脚だったことがわかった。
「牧野さん!」
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