第一話

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 ならば父は、何を思いながら彼女の最期を看取ったのだろうか。  英司が父の立場だったなら、自分は一体どういう選択をしただろう。  そもそも父は、どんな思いを抱えながら、数田美町で医者を続けているのだろう。  そう考えて、ふと思った。  自分は一体、どんな医者になりたいのか───。  幸いにも医者になるまでの道のりは順調だったが、父と同じ土台に並んで初めて気付いた。そこから自分は、どんな景色を見ようとしているのか───その答えが、自分自身で全くわからないということに。  どれだけ頭を捻っても答えが見つからず、英司は気付けばこの町へ戻ってきていた。有り難いことに、勤務していた医療センターから継続勤務の話を貰っていたにもかかわらず、それを断ってまで。   盆や正月には帰省していたものの、大学時代も含めると九年ぶりに帰ってきた数田美町は、一層寂れたように見えた。  かつては商店街の入り口に店を構えていた、市川鮮魚店。一家が引っ越して以来、ずっと下ろされたままの錆びついたシャッターが、もの悲しさを漂わせていた。  そして英司が父の病院に勤務し始めて二年。     
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