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まともに育ててもくれなかった母にも従順で居たし、客にどんな要求をされても、余程の無茶でもない限り芳は何でも受け入れてきた。だがそんな芳でさえ、藤原だけは生理的に受け付けられなかった。
藤原と話すときだけは、ヘラヘラ笑うことしか出来なくて良かったと思った。嫌悪感を剥き出しにせずに済んだから。
それなのに、『運命』は無情にも唐突にやってきた。
「あっ、あ、ゃ……っ!」
自分の口からひっきりなしに零れる声に、頭が追い付かなかった。
全裸に剥かれた芳は、ベッドに四つん這いになって、自ら腰を突き出している。
そしてそんな芳に覆いかぶさるようにして、細い身体を奧深くまで貫いているのは藤原だ。
───なんで? どうして?
お互いを良く思っていなかったはずの自分たちが、何故こんなことになっているのか。
嬌声を上げながら、芳は必死に記憶を辿った。
その日、芳は出勤した直後に、予定より早くやってきた発情期に見舞われた。そのとき店に居たのは全員Ωだったので、「お疲れ様」とでも言いたげな視線を向けられたのは覚えている。
発情期の間は妊娠の可能性などもある為、客の相手は出来ない。藤原に連絡して暫く休みを貰おうと、携帯片手に店を出たところで、丁度やってきたばかりの藤原とバッタリ遭遇した。
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