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Ωの発情にあてられすぎて、衝動で番ってしまうαも居るとは聞く。だが、日頃から男のΩを心底嫌悪して蔑んでいる藤原が、芳と番ったりなんてするわけがない。そもそも芳が発情していたところで、手を出すことすら考えられないくらいなのに。
なら、どうして───。
「んあっ、ぁ、こんなの、嘘だ……っ、なんで……っ!?」
「それはこっちの台詞なんだよ。ぶっ殺してやる……!」
憎々しげな言葉と共に、藤原がまだ痛む芳の項を押さえつけた。一際高く腰を突き出す格好になった芳の最奥を、藤原が容赦なく穿つ。
自分たちの間に何が起こっているのか、全く理解が出来ないまま、芳は味わったことのない快楽の激流に翻弄され続けた。
二十七才の誕生日を一週間後に控えた夜の出来事だった。
それからどのくらい、藤原と交わっていたのかもわからない。
体の火照りが治まった頃、下肢は泥のように重かったが、散々激しく貫かれたにも拘らず、痛みは全く感じなかった。
───よりによって、あの藤原に抱かれる羽目になるなんて。
頭は嫌悪と悔しさでいっぱいだったのに、芳の身体は確かに満たされている。そのことが、より一層悔しくて恐ろしかった。
目が覚めて藤原の姿が無かったのを良いことに、芳は逃げるようにアパートへ戻り、自分と藤原の間に起こった現象の原因を、片っ端から携帯で検索した。
探しても、探しても、探しても。
出てくるのは、決して受け入れたくない単語ばかり。
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