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何度目かわからない絶頂を迎えた芳の目尻から、涙が伝い落ちた。この時本当に殺されていれば、まだ良かった。
『運命の番』との、地獄の日々の幕開けだった。
『運命の番』は、その相手に巡り会う確率自体が非常に低い。
Ω側が発情しているタイミングで出会う必要がある上に、相手はこの地球上のどこに存在しているかすらわからないからだ。
人生の中で数えきれないほど発情期を迎えるΩでも、その最中にどこの国に居るかもわからないたった一人の人物と出会うことなど、まずないだろう。
だからこそ、報告例自体が少ない『運命の番』は、まるで夢物語のように語られていることが多い。
だが、実際はそんなロマンチックなものじゃない。
中には本当におとぎ話みたいな『運命の番』も居るのかもしれないが、芳はずっと、『運命』なんて最初に言い出した人間を一発くらい殴ってやりたいと思っている。
自分の意思など一切関係なく、否応なしに番わされてしまう『運命』なんて、望んでいなかった。
芳と藤原が『運命の番』なのだと気付いてしまってから三年。
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