第四話

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 最初はどうしても認めたくなくて、何度か藤原以外の相手と関係を持とうと試みたが、やはり毎回酷い拒絶反応に襲われて、今では芳は藤原の部屋に見えない鎖で繋がれている。身体で稼ぐことも出来なくなってしまったので、不本意ながら芳は藤原に飼われている状態だった。 『unlock』なんていう店の経営者に縛られているなんて、とんだ皮肉だ。  単なる番であっても、互いの合意なしに衝動的に番ったというケースもある。『運命』だろうがそうでなかろうが、番ってしまえばαもΩも、互いにパートナーの身体しか受け付けなくなる。  特にΩに関しては、発情期の最中はパートナー以外の人間にほんの少し触れられただけでも、身体が強い拒絶反応を示す為、迂闊にパートナーから離れられない。  その代わり、パートナーであるαとの行為は、Ωの欲求をこの上なく満たしてくれる。  だからこそ、始まりは不本意でも、本能的な欲求を満たされる快楽に流されて、次第に絆されていく番も多い───と、ネット上には書かれていた。そのくらい、第二の性の本能に、人は抗えないのだと。  けれど芳は違った。  三年経った今でも、藤原との行為には相変わらず嫌悪しかない。  身体を重ねれば、身体は勝手に快感を拾う。だが、元々藤原という人間が嫌いな芳は、そんな自分自身にすら、嫌気がさしていた。  感情が伴わないセックスは、酷く苦痛だ。身体ではなく、心が辛くて堪らない。     
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