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いっそ、発情期なんて一生来ない身体になればいいのにと思う一方で、発情期がちゃんと一定間隔で訪れることに、芳はホッとしていた。
藤原と身体を重ねている以上、妊娠の可能性があるからだ。
抑制剤は殆ど効果が無かったので飲むのは止めてしまったが、避妊薬だけは必ず服用していた。藤原との子を身籠ることだけは、絶対に避けたかった。
発情期がやって来るということは、芳が妊娠していない証でもある。
来るな来るなと願う一方で、毎回発情期が来るたびに安心している自分が滑稽だった。
藤原と身体を重ねる度、ズタズタに引き裂かれていく胸の痛みを打ち消すように、芳は耳にピアスを開けた。お陰で今では両耳が穴だらけになった。
項の傷痕を見るのも見られるのも嫌だったので、髪も伸ばして、黒かった髪を別人みたいに明るく脱色した。
無意味だとはわかっていても、藤原と番っているΩは牧野芳とは別人なのだと、思い込みたかった。
いつまで経っても、絆されるどころか藤原に対して嫌悪感しか湧かないのは、元々彼のことが嫌いだったからというだけではない。
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