第四話

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 藤原の部屋に縛られるようになっても、借りだけは決して作りたくなかった芳は、自身の生活費を稼ぐ為、近隣のクラブでキッチンスタッフのバイトをさせて貰っていた。そのクラブのスタッフ仲間と話している中で、藤原がどうやら反社会勢力と繋がりがあるらしいという噂を聞いてしまったからだ。  おまけに最近では、覚醒剤の売買にも手を出しているようだという、きな臭い話も耳にした。  言われてみれば、藤原自身もカタギの人間には見えない風貌だし、部屋にいかにもといった風体の男が訪ねてくることが度々あった。  自身が経営していながら、『unlock』のスタッフを常に卑下している藤原は、当然スタッフからの評判も良くはない。だがそれでも羽振り良く金を払ってくれるので、辞めていく人間は少ないが、考えてみればそれも何だか妙だ。  極力関わりたくなかったので関心も持たなかったけれど、同じ場所で過ごしていても、藤原がまともな仕事をしている様子はない。  昼前に起き出し、いつも誰かと電話をしては、相変わらず派手なスーツで出掛けていく。そして数時間で戻ってくることもあれば、翌朝まで戻らないこともある。後者の場合、酷いアルコール臭を纏っていることが殆どだ。  そんな生活をしている藤原が、何故忌み嫌うΩを雇って風俗店を経営しているのだろう。その資金源は……?  考えれば考えるほど噂が信憑性を増していくようで、芳は思わず身震いした。  その直後。まだ午後四時前だというのに、藤原が部屋へ戻ってきた。     
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