第四話

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 挨拶どころか、お互い視線すら交わさないのもいつものことだ。  藤原が、提げていたアタッシュケースを無造作に部屋の隅へ置き、そのままシャワーを浴びに奥のバスルームへ向かった。  数時間前、部屋を出て行ったとき、藤原は手ぶらだった。  ───反社会勢力。覚醒剤。  物騒な単語が頭を過ぎる。  バスルームから水音が聞こえ始めたのを確認して、芳はそろりとアタッシュケースを開けてみた。 「………っ!」  中を覗いた瞬間、危うく声が出そうになって、寸でのところで飲み込む。  アタッシュケースの中には、ビッシリと隙間なく札束が敷き詰められていた。  ───なんだよ、この金。  こんな大金を、一体どこから?  そもそもどうやって?  思わず大量の札束に目が釘付けになってしまったが、ふと見ると蓋の裏側には、白い砂糖のような粉末が入ったチャック付きのポリ袋が四つ、貼り付けられている。 「……なにコレ……」  どうして金と一緒にこんなものが…と手を伸ばしかけて、ハッとなる。  テレビでよく見る、警察のドキュメンタリー番組に出てくる覚醒剤に、似たような粉末があった。     
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