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藤原が最近手を出していると言われている覚醒剤。そんなものとは無縁な芳には相場なんてわからないが、それでも相当な高値で売買されているということくらいは知っている。
謎の粉末と、大金。
そんなものを揃って持っているということは……。
背筋をゾッと冷たいものが駆け抜ける。
見てはいけないものを見てしまった気がして、芳は急いでアタッシュケースの蓋を閉めると、元の場所へ押しやった。
───俺は何も見てない。知らない。アイツが何を持ってたって、俺には関係ない。
何度も自分にそう言い聞かせながら、気を逸らそうと携帯を手にソファへ腰を下ろしたが、ドクドクと騒ぐ胸が一向に鎮まらない。
程なくして藤原がバスルームの扉を開けた音にビクリと肩が跳ねてしまい、芳は気付かれないよう、興味もないニュース画面をひたすら眺め続けた。当然、内容なんて頭に入ってこない。
下着姿でバスルームから出て来た藤原は、やけに上機嫌だった。別に芳に声を掛けてきたりはしないが、珍しく鼻歌なんて零している。
ひょっとして、あのアタッシュケースが関係しているのだろうか。
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