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第一話
「採血の結果も問題ないし、レントゲンも特に異常ないですね」
細かい文字の並ぶ結果レポートと、パネルに貼り付けたレントゲン写真を交互に見比べて、英司はカルテにその結果を記入する。
「ただ、喉は少し赤いので、恐らく喉からくる風邪だと思います。喉の炎症を抑える薬と、念の為解熱剤も処方しておきますが、症状が悪化したり長引くようなら、早めにもう一度受診して下さい」
英司が手渡した採血結果の用紙を受け取って、マスクをつけた患者の初老女性はホッとしたような笑みを零した。
「ありがとうございます。若先生、もうすっかり立派なお医者さんですねぇ。ついこの間まで、制服着て学校に通ってた気がするのに」
くしゃりと目尻に皺を刻んで笑う女性の顔は、まるで孫の顔でも見るかのようだ。
英司にとっても、生まれ育ったこの町の住人は、皆親戚のような感覚なので、彼女が感慨深い声を上げる気持ちはわからなくもない。
ただ、『若先生』という呼び名には、どうしても慣れることが出来ない。
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