鬼哭《きこく》

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 二人の気配がなくなると,スマホが汚れないようにポケットにしまい,俺も屈むようにして防空壕跡の中を覗き込んだ。  懐中電灯の光が中の連中の身体で遮られ,外まで届かず,真っ暗な入口を手探りで探りながら進むしかなかった。 「なぁ……全然見えないんだけど……こっちを照らしてくんないかな……」  恐る恐る声を掛けたが,中から返事がなかった。  悪ふざけをして返事をしないのだろうと,しょうがないと思いながら,ゆっくりと進んでいった。中は外よりも冷たく,壁はコンクリートのように冷たく固かった。 「どう……? なんかあった……? 俺もここに入るの初めてなんだけど……」  四人は屈んだままピクリとも動かず,奥で集まっていた。 「なんか言えよ……お前ら,洒落になんないって……。やめろよ……マジで怖いから……」  頭に気を付けながら進んでいくと,ようやく四人のところに辿り着いた。 「結構,涼しいな……こんなか……」  四人に話しかけたが誰も返事をしてくれず,最後に入ってきた俺をビビらそうとしているのだと思った。
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