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冷えた土はコンクリートのように固く,足場はしっかりしていた。
それでも五人で入るには入口が狭いことと,奥がどうなっているのかわからないので加藤と秋本が先に入ることになった。
二人が屈むようにして防空壕跡に入って行くと,懐中電灯の光がグルグルと回っていた。その光を外から見ていたが,二人は声を立てることなく静かに中の様子をうかがっている様だった。
しばらくして懐中電灯の光がまっすぐ外に向けて照らされた。
「意外と奥は広いぞ……入って来いよ……思ってた以上になんもないから……」
加藤の声がしたが,高橋と山下は防空壕跡に入ることを躊躇していた。
「大丈夫……ただの横穴だよ……。じゃあ,俺から先に入ろうか?」
女の子たちの前でよいところを見せようと一歩前に出た。本当は俺も中に入りたくなかったが,いまさら後には引けなくなっていた。
「私が先に入る。最後は怖いからヤダ!」
高橋が山下の手を握り,二人で俺を見た。
「私たちが一緒に入るから,外で見てて……」
俺は黙ってうなずくと,二人が身を丸めるようにして防空壕跡に入って行くのを見ていた。小さな背中はすんなりと穴に消えていったが,その姿が一瞬で闇に消えてゆくのを見て胸が締め付けられた。
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