第2章 父と子

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 良く晴れた日の大空は、見慣れているとはいえ毎度のことながら新鮮な青色を楽しませてくれる。  東京時代の空は変わり映えしない色にしか見えなくて、一日ずつ違うという当たり前を見逃していた。伊達に年は取ってないんだ、と思う。今の俺には、空の色を楽しむ余裕がある。  それは妻の存在が大きい。彼女の感性が好きで、寄り添って一緒に同じ目線に立つと、一人の時には気付けなかったものがちゃんと見えてくる。  今朝の彼女はとても眠そうだったから、俺が先に起きて朝食と弁当の支度をした。まだ慣れ始めたばかりの保育士の仕事について、夏鈴はあまり語ってくれない。彼女は、自分の中である程度練り上げてから言葉にするようなところがある。そういうところ、親父にもあったなって最近気付いた。考えてみれば俺だってそうなんだよな。  俺達は似ているんだな…。  市内に入ると車の交通量が一気に増えて信号待ち渋滞に入った。夏は単車や自転車で車道を走る人も多く、本州からのバイカーも増える。海の玄関と言われるフェリーが出入りするせいで、この町は道外のナンバープレートをよく見かける。今、目の前にいるバイクのナンバープレートに昔住んでた住所が書いてあった。
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