第1章 父と母

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 どんな人にも誕生日はあるけれど、私にとって誕生日はいくつかある。  この世に生まれて来る前に、母のお腹に飛び込んだ日がひとつめ。そして生まれてきた日がふたつめ。もっと遡ると、父と母が出会い恋をして永遠の愛を誓った瞬間もまた、私が生まれる環境が整った日でもある。  普通の人は知らないことだけど、私はちゃんと覚えている。そういうことは忘れないみたい。  それから、私が晴馬と出会った日も誕生日みたいなものだ。あの瞬間から、私は自分の生き方の中に、彼の存在を取り込んで今日まで歩いてきた。彼失くして今の私は存在しない。  この二年間を振り返ると、あっと言う間だった。  今日、私は二十歳になり、成人する。
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