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学級委員長は顔色ひとつ崩さずに言い放った。
「先生はこの学校の卒業生と結婚していますよね? その生徒が在学中に手を出したんでしょ?それって、風紀的にどうかと思います」
「俺が風紀を乱しているって言いたいのか?」
「そうです」
生徒達が一斉に喋り出すと雑音が最大ボリュームで鳴り出したみたいに不快な音に包まれた。好奇の目、軽蔑の目、邪推や妄想がこの小さな空間を飛び交っている気がした。細い雲の糸にからめとられるような不快感がやってきて、俺はまた深くため息を吐いた。
「しかも、生徒を妊娠させたって聞いていますよ」
「それは、ない。その生徒は、間違いなく俺の妻だが、結婚して三年目でも彼女はまだ一度も妊娠していない。在学中に婚約した事実はあるが、法律的には何の問題もないだろ?」
「法律うんぬんっていうこといじゃないですよ。良い大人が未成年の女生徒にふしだらな感情を抱いたっていうことが問題なんですよ」
また、ざわめきが一段と増した。一旦、話しを切り上げて皆を静かにさせるのが先だと判断した俺は、クレーマーの生徒の名前をチェックして授業続行を優先した。それでも、クレーマーはまだ挑戦的な睨みを効かせてくるから、一度職員室に行って他の教師と交代したほうが良いか相談したくなった。夏鈴が卒業してから三年経った今、なぜこんなことになるのか意味がわからん。
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