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「もうちょっとだけ…右上だ……」
私は、指図を受けるがままに動いて、静止する。
「あ、そこそこ。それでいい。そのまま……そのまま、五分で良いから頑張って」
晴馬が目を細めて私を眺めていた。あんなに真剣なまなざしで全身をジッと見詰められるだけで、身体の奥が熱くなってしまう。
しかも、タオル一枚だけ身に着けてベッドの上で同じポーズをし続けるんだから大変。五分でもすごく長い…。
じっとしているって、こんなにも辛いものだったなんて…。
白いシャツの袖をまくり上げた晴馬の腕が大きく動いていた。
あの血管が浮いて骨ばった腕とか、長い指とか、小さな顔もそうだけど、なんてカッコいいんだろう。結婚して二年が経つけど、毎日見ていても全く飽きない。視界の中に彼がいてくれるから、私はとても安心するんだ。
絵を描いている晴馬は美しい。真顔で作業する仕草ひとつとっても、絵になる。
私は心のシャッターを押して、夫のブロマイドを撮影していた。頭の中のアルバムには彼のセクシーショットを沢山詰め込んでいる。
「あぁ……もうちょっとで終わるから、背筋をピンと!」
「…はい」
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