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白いシャツのボタンを私が外し始めると、さっき魅せた真剣な顔になった晴馬が私を見下ろしてフッと微笑んだ。
「そんなに俺が欲しいの?」
「……欲しいの…」
「もう一回、ちゃんと言ってごらん」
最近はこの調子で、晴馬は私に命令をする。
命令に従ったふりをしてあげながら、私は彼を悦ばせることに目覚めてしまっていた。
言葉遊びだけれど、この遊びには注意が必要だと思う。
「お兄ちゃん……。キスして……」
「キスだけでいいの?」
最後のボタンを外すと、うっすらとした筋肉質な彼の身体が露になった。
晴馬からは、とても良い香りのフェロモンが出ている。こういう香りを出す男の人は、命がけで生きている人らしい。彼は火事から生還した過去を持つから、その時に身体が覚醒したのかもしれない。
お母さんが晴馬の香を嗅いだときに、「夏輝の香に似ている」って言ってた。夏輝は私のお父さんの名前だ。
無意識に、お父さんと似た香に惹きつけられたのかもしれない。晴馬とお父さんは、私の心の中では一人の人物のように重なってしまう……。
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