第1章 父と母

9/14
前へ
/56ページ
次へ
 自分の服を着て、寝ている晴馬にお布団をかけてあげた。夕方になるとちょっと肌寒いから、うっすら開けていた窓を閉めてお湯を沸かした。  ぼうっとしながらインスタントコーヒーを淹れて飲む。あと一週間で私は二十歳になり、成人する。  成人する前に晴馬と結婚してしまって、順番が世間一般とは違うけど気にしない。大人になれるっていう感覚でもなくて、ただこの世界に生まれて二十年目という節目を迎えることに、何とも言えない嬉しさを静かに感じていた。  やっと二十歳になれる。  そんな気分。  冷蔵庫を開けて、したごしらえされたバットを取り出して、スキレットの中にそれを入れて低温加熱すると、ふっくらと美味しく焼き上がる。今夜はチキンと夏野菜のグリル。キャンプ以来、このフライパンが気に入って、私は色んなお料理を楽しみながら作っている。  お風呂を洗ってお湯を入れ始めた頃に、晴馬が目覚めてやってきた。寝癖がそのままで、裸に白いワイシャツを羽織って、ジーンズを履いているのにボタンがとまっていないいつもの着崩したラフな格好で私に抱き着いてくる。 「こら! 俺をベッドに置き去りにしたな」  耳元で囁かれて、くすぐったくて笑ってしまった。 「あんなに集中したから、疲れてるかなって思って……」 「…うん。気持ち良かったよ…。昼寝も、夏鈴(おまえ)も」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加