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「サマー副長、そろそろ時間です」
門番の一人がサマーに声を掛ける。
「そうですか。では」
サマーは扉の前に立つと、一メートルほど後ろに下がり、ポケットに手を入れた。
一人の門番が、右側の扉を少しずつ両手で開けると、分厚い鉄が重そうに音を立てる――。
もう一人の門番は開く扉の前で、背負っていた鎌に手を掛けていた。
扉が開くにつれ、足元から大量の冷気が部屋に流れ込む――俺はその異様な空気に、サマーの後ろで息を飲んだ。
薫は怯えた顔で、俺の横にピタリとくっ付いて動かない。
「おや? 懐かしい方が居ますね」
段ボールがギリギリ入る位、開いた扉を覗き込むと、サマーが微笑んだ。
暗闇で良く見えないが、コツコツとこちらに向かってくる足音だけは、俺にも聞こえた。それに、またこの感覚……つい昨日、寮の食堂で闇の中に感じたのと似ていたが、何かが決定的に違っている……それでも恐ろしさに変わりは無かった。
俺は強い悪寒に呼吸も乱れ始めた。
「歩? どうしたの? 大丈夫?」
薫がフラつく俺を、支えている。
「申し訳ありませんが、魔力をもう少し落として頂けますか? 新人にはキツイ様です」
「新人? それも人間? いいのか? 連れて来て? まあ取り合えず、人型になるか……」
部屋に流れていた冷気が一瞬で止んだ――。
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