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受付の奥では多くの人が働いている。
電話を取り、机に向かい、数人で打ち合わせをする――普通に考えてみれば会社なので問題の無い光景だが、俺は驚きで声が出なかった。
「どう? ビックリしたでしょ?」
得意気に忍さんが俺の顔を覗き込む――俺は忍さんの存在にさらに驚いた。
「忍さん! 何処に居たんですか?」
「ずっと隣に居たわよ」
そんな訳がない……ついさっき霧の中では、俺の周りに人の気配は一切感じなかったし、忍さんの声だってかなり遠くに聞こえていた。
「え? ずっとですか? 霧の時は? 俺……いや、自分は結構歩いたのですが……あれ?」
状況が飲み込めず、自分でも何を言っているのか分からなかった。
「落ち着いて、歩君! これから貴方が見聞きする事は、すべて現実よ。いい? 私に付いて来て」
忍さんは真っ直ぐ俺を見つめてそう言うと、受付の奥へ足早に歩き始めた。
頭が混乱して、うまく返事が出来なかったが、取り合えず俺は言われるがまま、忍さんの後を付いて行った。
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