一章 屈辱の先

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 朝七時。街が完全に目覚めようとしている頃、人々は一日の始まりに、多かれ少なかれ覚悟や諦めを胸に抱きながら、朝の独特な時間の流れに身を任せている――。  雲ひとつない空、街を吹く少しまだ冷たい風――気持ちの良い四月の朝なのだが、なんとなく無機質にさえ感じるそんな平日の空気が、学生の頃から俺は苦手だった。    ただ、今日はいつもとは少しだけ様子が違っていた――。  真新しいスーツに身を包み、その顔に期待と緊張を滲ませながらも、颯爽と歩いている若者達。  将来この国を背負って立つ彼らは、実にたくましく見える――。  しかし、それは今の俺にとって、妬ましい光景でもあった。    こんなはずでは……そんな思いを抱く事など、自分の人生には無いと確信していた。  だか予想外の事が起きた時、俺はそれに抗う力を備えていなかった上に臆病だった為、与えられた『ゴミ』を文句も言わずに受け入れる事しか出来なかった……。   それが今の会社だ――。  
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