三章 死神工場

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 呑気なやり取りをしながら歩く工場への道は、やわらかい夕日に包まれていた……。    工場は夜から稼働をするらしい――同じ道を俺達の様に歩いている人間が、他にも数人いた。    なんとなく初々しい彼らも、工場に向かうのだろうか? しかし、俺達以外に日本人は居ない様だ。 「なあ、あの人達も、工場に向かっているみたいだよな?」 「これだから歩は! みんな新入社員よ!」 「まぁ、そういちいち怒るなよ薫。歩はまだこっちに来て、日が浅いんだから」   大蔵が俺と薫の間に入り、話を続ける。 「歩、社員は国ごとに居るんだよ。僕らと同じように新入社員は三ヶ月間、それぞれ国の寮で生活をするんだ。この仕事は人間の感情が深く関係するから、国民性が分かりやすい方が都合がいいんだよ。だから日本の担当は日本人、アメリカの担当はアメリカ人と決まっているのさ」  そうか……此処に個性的な建物が多く在る理由が理解出来た。まあ、向こうから見れば、俺達のボロい寮の方がよっぽど奇妙だろうが……。  それにしても、人間の感情とか言われても、肝心の仕事内容がいまいちよく解らないな……時折、人間らしい日常に忘れそうになるが、俺が入ったのは「魂再生機構」と言う、異次元に存在する会社だ。  これから何が起きるのかさえ想像も付かない……そう考えると、俺はまたどうしようも無い不安に襲われた。
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