三章 死神工場

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 昨日訪れた本社ビルを通り過ぎた直ぐ隣に、目的の工場は在った。  二階建ての様だが敷地がとても広く、規模がどの程度なのかも把握が出来ない。  入り口でもある、自動ドアの先に広がるロビーでは、様々な国の言葉が飛び交っていた。  俺達がその光景に戸惑っていると、正方形の箱型をした一つの黒い塊が、こちらに近づいて来るのが分かった――よく見ると、あちこちにその黒い箱は点在していた。 「どうも今晩は。日本支部、新入社員の方々ですね」  人間の頭ほどの大きさがある、黒い箱から声が聞こえる……。 「本日、あなた方の案内を担当する、死神のサマーと申します。宜しくお願い致します」 「宜しくお願いします」 「では、参りましょうか」  本当に死神なのか? 想像とはかなり違うな……俺達は奇妙な箱に連れられ、工場内部へと入った。   「あの……サマーさん。死神は皆さん、その姿なのですか?」  階段を上りながら聞きずらそうに、大蔵が質問をする。 「いえいえ、本当は人型ですよ。工場では効率が悪いので、この姿で仕事をしています。あなた方は自由に伸縮は出来ないそうですね? 邪魔ではありませんか? 体とか? お望みなら、首から下を切り落として差し上げますよ?」 「大丈夫です……」  なるほど……忍さんの言葉通り、死神は相当な変わり者だと言うことは、俺にも理解が出来た。
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