三章 死神工場

9/18

35人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
「なあ、記憶はどうするんだ? それに、最初に分けられた、その他の魂は捨てるのか?」  俺は大蔵に耳打ちをした。  死神にこの世界の事をあまり知らないとバレるのが、なんとなく怖かった。 「おや? 何も知らない方も、いらっしゃるのですねぇ。君、予備校には行かなかったのですか? 試験はどうされたのです?」  死神は異常に耳が良いらしい。 「彼は予備校にも通わず、試験も受けずに入社したんです!」  その話になると、機嫌が今だに悪くなるのが良く分かる口調で、薫が答えた。 「それは珍しいですね。変わった子が居るなと思ってはいましたが……日本支部も久し振りに新入社員を取ったかと思えば、そんな採用方法も初めて聞きました。なるほど――工場長が案内したがっていた訳ですね。残念ながら社長に呼ばれて、今日は工場に居ませんが……」  死神にまで「変わっている」と言われるとは……やはり、この世界で俺は劣等生なのかも知れない――。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加