三章 死神工場

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 何階まで降りたのだろう……此処にはエレベーターは存在しないのか? 「お二人共、申し訳ございません。防犯上、この工場にはエレベーターが無いので、帰りもこの階段を登って頂く事になります」  俺の心を読んだかのごとく、サマーは謝るが、自分はプカプカ浮いているだけなので、きっと俺達の辛さを理解してはいないだろう。 「防犯上とは、どういう意味ですか?」  薫が少し不安そうに尋ねた。 「この工場は唯一下の世界と繋がっている為、階段には悪魔用に強い結界が何重にも張ってあります。もしもエレベーターが有って、その中の結界が破られでもしたら、ボタン一つで上まで直ぐにたどり着けますからね。階段を使用するしかないのです」 「工場全体に強い結界を張れば良いのでは……?」  確かに薫の言う通りだ。そうすれば、エレベーターは設置可能だ。 「中沢さんのお考えはもっともですが、工場中に強い結界を張ってしまいますと、悪魔用とは言え、近い性質を持つ私達死神の力まで弱まってしまうのです。実際に私でも、今は調子が悪いですしね。幸い、私達は浮きますので、階段は特に不便とは思いませんし……」 「なるほど! 同じ会社の社員なのに、訪れる人間の事は一切考えなかった訳ですね!」と、嫌味の一つも言ってやりたいほどの距離を、階段で永遠と降りた後、やっと広い空間に俺達は出る事が出来た。 
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