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そこは、今まで見て来た工場の感じとはまるで違っていた。なんと言うか、寒々しく、寂しい部屋だった――。
コンクリート剥き出しの空間に、天井から裸電球が幾つかぶら下がっているのだが、全く明かりが足りていない。そして何処からともなく、足元に僅かな冷気も流れていた。
広いその空間の奥まで行くと、観音開きの黒くて、やや大きめの木製扉が目の前に現れた。
「さあ、ここからが本番ですよ」
サマーが扉の前に立つと、箱状の体はいきなり破裂し、そこから何かが飛び出した。
出て来たのは、人間ほどの大きさをした、黒い煙――。
その気体は、蝋燭の様に扉の前で揺れていたが、少し経つと、徐々に人の形に変化していった。
「サマーさん?」
そう俺が呼び掛ける頃には、すっかりサマーは人間の姿になっていた。
「どうですか? 元々は人型でしょう? この姿に戻らないと、出せる魔力が足りなくて、扉を開ける事が困難なのです」
「はあ……」
確かに人間だか、彼の肌は黒く……と言うか、日焼けをしていて、短い茶髪に爽やかなイケメン顔、細身だが鍛えられている体……? ん? どういう事だ?
肌や髪色位ならまだ飲み込めるが、服装がTシャツに、ハーフパンツとビーチサンダルと言う、インパクトがあるその姿に、俺達は少しの間言葉が出なかった。
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