三章 死神工場

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「よう、久しぶりだなぁ、サマー」  暗闇から現れたのは、細いストライプの入った、紺色のタイトスーツを着ている、長身の男だった。  品の有るシュッとした顔立ちに、短く綺麗にセットされた黒髪が良く合っている――いかにも出来る男と言った感じだ。 「お久しぶりです! サントラさん。しかし、今日の受け渡し担当はひなこさんでは?」 「相変わらずのサボりさ。お陰で同期の俺が代役って訳だ。お前こそなんで此処に居るんだ? ずいぶん偉くなったって聞いたから、受け渡しはもうやらないのかと思っていたよ」 「そちらは上級者しか出来ない決まりですよね? 確かに工場には専門の担当者が居るのですが、今日は特別に代わってもらったのですよ。新人の工場見学ですからね」 「新人って言ったって、人間だろ? こんな所まで見せて大丈夫なのか?」 「どうでしょう? まあ、何とかなりますよ。それに見て下さい。珍しいでしょう? 彼……ひなこさんなら、興味を持って頂けるかと思いまして……」    サントラはじっと俺を見つめた。その瞳が段々と青色に光ってゆく――俺は心臓が止まりそうだった。一瞬、あの冷気がまとわりつくのを感じたからだ。 「へえ……こんな奴が居るんだ。確かに旨そうだが、本社の人間には手を出せないからなぁ。しかしお前……どうして入社出来たんだ? こちらのお嬢さんとはかなり実力の差が有る様だぞ?」  サントラが牙を見せて笑った。目の色は元の黒目に戻っている――悪魔に誉められて、薫は嬉しそうだった。
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