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「サマーさん! 晩餐の時間が迫っています! サントラさんも!」
門番が急かす様に、黒い段ボールをサントラに渡す。それを全て受け取ったサントラは、門番の差し出す伝票にサインをすると、気まずそうにサマーを見た。
「いや、非常に申し訳ないのだが……」
「何ですか? ……まさか?」
サマーの表情にも、焦りが見えた。
「そうなんだ、今日の晩餐時刻が早まって……ひなこの奴、その報告すらしていなかったらしい……」
「後何分ですか?」
「三十秒だ。スマン! まだ少人数だから……じゃ、またな!」
そう言うと、サントラはその場から消えていた。
門番が腕時計を見て叫ぶ。
「サマーさん! 後二十秒もありません!」
「今すぐ、扉を閉めて下さい!」
門番二人とサマーが必死で扉を締めるが、重くてそう簡単には閉まらない。
「駄目だ! 間に合わない! 二人共! 今すぐ目を瞑って! 耳も塞いで! 扉が閉まるまで息もしないで下さい! 来ますよ!」
俺と薫は訳も分からず、サマーの言う通りにした。
「ギィヤャアァァー!」
息を止めた瞬間、聞こえたのは大勢の悲鳴だった――塞いでいても、耳を裂くような悲痛な叫びに、俺は震えが止まらなかった。
ようやく扉の閉まる音が聞こえると、辺りに静寂が戻った。
「もう、大丈夫ですよ……危うく大切な新人お二人を、廃人にしてしまう所でした」
「今のは、もしかして……えっ?」
その場に座り込んだ薫は、混乱している様だ。
俺は腰を抜かして口を開けたまま、しばらく声も出せなかった――。
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