一章 屈辱の先

5/17
前へ
/159ページ
次へ
「……ちっ!」  俺がエレベーターを降りて会社の前に立ってから、すでに二分もの時間が経過しようとしていた。  動けない――その理由は二つある。  一つ目は、自動ドアが開かない事だ。手動式だが、ボタンを押しても反応が無い。  二つ目は、誰かに訴えようにも社内に人間が一人も居ない――。  まるで休日の様に静かだ。  良く考えてみれば、このビルに入ってからあの女子高生以外に、誰にも会ってないな?  いくら小さなビルとは言え、朝の出勤時間に誰にも会わないのは、流石におかしい……。    静まりかえる三階フロアに焦り始めた時、古いエレベーター独特の作動音が聞こえた。 「誰か来る……」三階に止まることを願いながらも、また俺の心臓は少し高鳴っていた。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加