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「ちょっと! 大蔵! 押さないでよ!」
「薫も、もう少ししゃがんで! 良く見えない!」
ドアの外で俺達は小競り合いをしながら、部屋の中を物色していた。
「お前ら、さっさと決めてこい! 会議に遅れるぞ! 後三分で中に入らないと、思いっきり後ろから押すからな!」
「えー!」
俺達は慌てて、再び部屋を注意深く見回した。
「見つけた!」
最初に薫がゆっくりと、真っ直ぐ奥の壁に向かった。
「よし!」
大蔵も静かに右側の壁に向かう――。
俺は何も決まらないまま、取りあえず部屋に入った。
こういう場合、左の壁に向かった方が、二人にぶつからずに済む……左を見ると、壁には様々な種類の剣が飾られていた――重そうだが、取るしかない……俺は剣を見据え、慎重に歩き始めた。
「うわっ!」
最初に武器を手に取ったのは、大蔵だった。
「ちょっと! 大きな声、出さないでよ!」
薫が大蔵を睨む。
「だって、ナイフが手の中に入ったンだよ!」
「そうだ! 武器に触ったら、手の中に入って来るからな! 最初は少し気持ち悪いぞ。後は好きな時に体から出し入れが出来るから、寮に帰ってから練習しておけよ! ちなみに武器は何度でも出せるからな。手を離れても、回収しなくていいぞ! その内消えるしな」
早川課長の声がとても遠くに感じた……俺は今、それほど集中しているのだ――。
「やった!」
部屋の奥で、小さく薫の声が聞こえた。
後は自分だけか……背後から、大蔵と早川課長の視線を感じる――薫は気を使って、静かに戻っている様だった。
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