一章 屈辱の先

6/17
前へ
/159ページ
次へ
 願い通り、エレベーターの扉は三階で開いた。   そこから降りてきたのは……男だ。    背中まで伸びた茶色い髪に切れ長の瞳、長身で細い身体を包むのは、上は白いシャツに薄紫のカーディガン、そして下は膝丈の白いタイトスカートを履いた、男だった。    男は固まっている俺に気が付くとすぐに駆け寄り、上半身を屈めて顔を近づけた。  彼の甘い香水が、鼻にまとわり付く――。   「どなた?」   鋭い視線が、強張っている俺の顔に突き刺さった。 「あっ! あの、今日から此処で働く柳原と言います。ステキ企画の方ですか?」   女装をした鋭い視線の男は、俺に近づけていた顔を離すと、ニッコリと笑った。    
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加