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「何だ? 火事か?」吸い込まないように気をつけながら、煙を手で払う――「違う……これは……霧だ!」混乱している間にもその霧はどんどん深くなり、周りも冷気に包まれた。
「忍さん! 何処ですか!」
白い空間に、自分の声だけが虚しく響く――どうしていいのか分からず立ち尽くしていると、忍さんの声が聞こえて来た。
その声は不思議だか、とても遠くに感じる。
「自分の好きな方向に足を踏み出して、まっ直ぐ歩いてちょうだい! 曲がっては駄目よ!」
「こんな何も見えない中、歩く? 大丈夫なのか?」俺は右手を恐る恐る前に出し、もう一度霧を手で払ったが、状況は何も変わらなかった。
「忍さん! 前が見えなくて歩けません!」
俺は声を張って何回か叫んだ。しかし、忍さんからの返事は帰って来ない。
何とかならないか? と俺はスマホを取り出したが、何処を押しても、画面に明かりが灯る事は一切無かった――。
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