夜間行路

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 長い旅のような夢から覚めた時、私は乗用車の助手席に座っていた。  まず目に入ったのはフロントガラス越しの闇夜に浮かぶ信号機の赤い光だった。  私は横の窓を見た。  暗くてはっきりとは分からないが、普段の生活であまり馴染みのない場所にいるのは確からしかった。  車内のどこかにあるスピーカーから、夜中のラジオ番組が控えめなボリュームで漏れ聞こえていた。何が楽しいのかは分からないが男のハイテンションな笑い声がざらついたノイズ混じりに聞こえた。  車内のデジタル時計は12:48と表示していた。小学生の私は普段ならとっくに布団に入っている時間だ。 「起きちゃった?」と運転席から母親の声が聞こえ、私はほっとした。  当たり前だが隣にはハンドルを握る母の姿があった。 「寒かった?」  母親に聞かれて私はううんと首を横に振る。  確かに車内の気温は少し肌寒かったけれど、厚く着こんでいたので我慢できないほどではなかった。  信号が青に変わり、車が走り出す。
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