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A「うーん、なんかちょっと違うんだよなぁ」
B「じゃあ、鼻の脂をちょっとだけ指ですくってレンズに塗ってみ? そうすると、ちょうどよくぼやけて幻想的な写真が取れるよ」
A「へぇ。でも私、乾燥肌だから……」
B「じゃあ、ちょっとだけ体温上げてみよっか」
A「えっ?」
後ろからいきなり抱きつくB。Aの体温は確かに熱くなったが、ただ単に厚着になったからではない。寒さで鼻の頭を赤らめていたAは、今度は恥ずかしさによって頬を赤らめた。乾燥肌だったAの体の内側から、ブワッと何かが溢れ出す。Bはそれを見てパッと離れた。Bは自分の鼻を指さして、こう言った。
B「ね? 俺もちょっと出てきた。やってみ?」
Aが自分の鼻を試しに触ってみる。さっきまで乾燥していたはずの鼻先に潤いを感じた。すかさずレンズの先に塗り拡げ、ファインダーにメガネをくっつけてみると……。
優しく降り注ぐ雪がまるでタンポポの綿毛のようにふわふわして見えた。思わずシャッターを切って確認すると、銀世界の中で降り注ぐ無数のタンポポの綿毛のような雪が写っていた。
A「ありがとう。でも、やっぱり乾燥肌なんだね、すぐに乾いちゃって……」
Aがそう言い終わる前に、BはもうAを抱きしめていた。
二人はしばらくそうして雪の綿毛の中で体温を感じた。
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