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そして、一週間がたった。時滑り被害者救出のリミットとされる日。
放課後、俺は女子高生のぞみとして、体育館裏に立っていた。早崎進に告白するために。
だって、俺はもう一生、女子高生飯島望として生きていくしかないかもしれないのだ。それだったら、この女子の身体を利用して、告白くらいしたって許されるんじゃないか?
わざわざ朝早くに登校して、早崎の靴箱に手紙を入れておいた。放課後、体育館裏に来てほしい、と我ながらベタだと思うけど。
来ないかもしれない、と思った。俺の時層では、早崎は特に女子には興味なさそうで、どちらかというと男子とつるんでいるほうが気楽、ってタイプだったから。むしろ、彼女なんてつくったら面倒だと思っていそうな方。
しかも、女子高生としてののぞみは、はっきり言ってモテると言える要素が少ない。容姿、十人並み。引っ込み思案だし、教室での影は薄い。成功確率は低いだろう。
確率。俺が元の時層に戻れるのと、どっちが高いんだろう、と思っていたところに、早崎がやってきた。足音だけで心臓がばくばくしている俺とは対照的に、早崎は気軽に片手をあげて「よう」なんていう。
「どうした、飯島。なんか、用事?」
俺の顔に血が上り、触れれば発熱したみたいに赤くなっているのがわかる。
「早崎、くん……」
ああ、いつもは呼び捨ていていた早崎の名前。それを、わざわざくん付けしないと不自然になってしまうこの状況で、俺はそれでも、告白したいという気持ちを抑えきれない。たとえ、OKが出ても愛されるのは俺自身ではないというのに。
逡巡に逡巡を重ねた。早崎は辛抱強く待ってくれた。そうして、絞り出すように「……好きです」という一言が、ようやっと漏れた。
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